第4章 夕虹
「ありがとう……」
バスを降り、改めてその子に頭を下げた。
我ながら情けない。
学校がある前日は、マジ無茶はやめておこう、と、ひそかに反省してると、二度も助けてくれたその子は、いいや、と首をふり、心配そうに表情を曇らせた。
「……まだ、顔色悪いけど、大丈夫?」
「え……」
「……今日も保健室行った方が……」
「…いや、ありがとう。こないだよりかなりましだから……」
オレンジジュースが、よくなかったんだ、と首を振り、その子を見上げる。
俺が微笑むと、ホッとしたような顔で、それならいいけど……と、ニコッと笑った。
ああ……可愛いな、と思った。
一見すると、近づきづらそうなほど整った顔をしてるのに、笑うとまるで印象がかわる。
そういうところ、なんだか、ニノと似てるな……なんて思った。
あいつも、誤解されやすいからなぁ……
「あ……じゃあ行こうか」
「……うん」
立ち話もなんだから、と、促されて、同じ方向に向かう学生たちに紛れながら、歩き始める。
てっきり、じゃあ……と、そのまま行ってしまうのかと思っていたけど、その子は今日も俺と歩調をあわせてきた。
「…………」
誰かと肩を並べて学校に行くなんて、長いことしてなかったから不思議な感覚だ。
基本、人と行動するのはあまり好きじゃない。
気を使うのも使われるのも、面倒だからだ。
でも、この子には、初対面から迷惑をかけてるから、嫌がるのも避けるのも失礼だし……。
しょうがないから、俺はおとなしく、その子の隣を歩いた。
ところが、あまりお喋りな方じゃないのか、その子も黙って歩き続ける。
雨だし、傘のぶんのスペースもあるし、不思議な距離感だった。
そのうち、俺は、ちょっぴり気になり、そっと傘越しに彼を見上げた。
俺よりかなり背が高い。
黒く艶やかな髪は、くるんとなみうってて。
前髪とかふわふわだ。
「……クセっ毛?」
「ん?ああ……俺?」
その子は、自分の髪をかきあげた。