第4章 夕虹
裏のバイト明けの、雨の日のバスはどうやら鬼門のようだ。
「…………」
つり革につかまってる腕に額を寄せ目を閉じる。
朝から柑橘系の飲み物を飲んでしまったことを後悔してた。
水か、せめて紅茶にしておけば良かった。
オレンジがボディーブローのように効いてる。
二度連続でバス酔いなんて、マジわれながらカッコ悪いわ……
でも、あと1つか2つ停留所を我慢すれば目的地だ。
そう思っていたとき、右斜め下から制服の裾をくいっと引っ張られた感覚に目を開けた。
ふっと顔をむけると、そこにはこの間、俺が具合が悪くなった時に助けてくれた子が座ってて。
大きな目が心配そうに大丈夫?といってる。
返事をためらっていると、そいつはおもむろに立ち上がり、そのまま体を入れ替えるようにして、俺を座らせてくれた。
あわてて見上げると、小さく頷いてくれる。
その目は、いいよ、座ってな、と言ってくれてるみたいで。
大丈夫か?とか口に出すと、どうしたって周りの注意をひく。
事を大袈裟にしないこの子の対応力に、少し感動しながら……ありがとう、と小さく頭を下げて、俺は体の力を抜いた。