第5章 白虹
この頃は、陽が落ちるのが本当に早い。
バスを降り、二人で俺のアパートに向かって歩いてる頃には、辺りは真っ暗になっていた。
俺のアパート周辺は、大通りから奥まった場所にあり、しんとした住宅街を抜けていかねばならない。
電信柱についてる白い街頭が、ポツポツと灯るなかを、たわいもない話をしながらゆっくり歩いた。
晩秋の空気は、夜になると、殊更に冷たく澄んでいく。
制服のジャケットからでてる手がだんだん冷えてきて、無意識にかたく握りこぶしをつくっていたら、ふと、その手をすくうように、持ち上げられた。
驚いて顔をあげたら、
「繋ご。手」
松本が、ふふっと笑って、この間の映画のときのように、拳を広げられた。
「え、でも」
戸惑って、思わず周りをみたけれど、辺りは誰もいなくて。
「だれも見てないよ」
松本は大きな手で俺の手をぎゅっと握った。
「……うん」
俺もそっと握り返す。
繋いだ手が温かい。
照れ臭くて、お互いうつむき加減になったまま、俺たちは、それから黙って歩いた。