第5章 白虹
一つずつ個別にケースに入ってるケーキを、手に取ることもせずに、ひたすらじーっと見つめてると、 松本がくすくす笑って、
「決まんないなら全種類買っちゃう?」
って言ってきたから驚いた。
「あと500円足したら全部買えるよ」
「いや、いい。あの、俺はイチゴがいい」
あわててど真ん中にあったケーキのパッケージを持ち上げた。
松本は、そう?といい、隣にあったフルーツタルトを手に取り、俺はこれにするから一口あげるね、と笑った。
なんだか、自分がものすごく優柔不断な男みたいで、恥ずかしくなった。
年上の余裕とか言ってる場合じゃないじゃん。
そのあと、朝のパンだとか、飲み物だとかを、わいわい言いながら選ぶのが楽しくて、笑いがとまらなかった。
だって、松本は朝からパンを三つも食うつもりだ。
相変わらずよく食べるんだなぁ。
細いくせに、がっちりししてるからだろうな。
いつだったか、抱き締められた胸は大きくて広くて温かったもんなぁ……。