第5章 白虹
「実はさ、兄貴から小遣いもらってきたんだ。大野さんとケーキでも食えって」
松本が、ふふ、と嬉しそうに笑った。
俺は、呆気にとられて、松本の顔と、スイーツの並んだショーケースを交互に見つめた。
あんなに俺に敵意むき出しだった松本のお兄さんが、そんなことしてくれるなんて。
俺との仲を認めてくれたとか言ってたけど。
人って……かわるもんなんだな。
俺は、ためらいながら確認する。
「……いいの?」
「うん…予算は気にしないで?っていっても1000円だけど」
「ううん。お兄さんに……ありがとうって言っといてね」
「オッケ」
そういうことなら、と、俺は松本の傍に寄り、ショーケースをのぞきこんだ。
迷うなぁ……
金箔ののったモンブラン、粉砂糖を振ったイチゴがたくさんのってるショートケーキ。
デコレーション鮮やかなフルーツタルト。
俺が、うーん、と真剣に悩んでる横で、松本は嬉しそうに一緒にしゃがんだ。