第5章 白虹
初めて気がついたことだけど、好き……と、いう想いって不思議なものだ。
枯れることなく、次から次にコンコンと涌き出てくるもんなんだね。
松本に会えば会うほど……言葉をかわせばかわすほど、その想いは、胸からあふれでそうになる。
俺は、人に好きになってもらう資格なんかないって、さんざん泣いたけど、あいつに、それでも好きだよって認めてもらってからこっち……なんか変だ。
あいつを好きすぎて……変だ。
甘酸っぱいジュースを飲みながら、ぼんやりと棚にあるもうひとつのマグカップを見つめた。
おそろいの黒のカップは、こないだ雑貨屋で買ったもの。
今度松本が来たとき、一緒に使おうと思って、衝動買いした。
あいつには言えないけど、うちにあるのは、ニノとの思い出が強くて。
ニノと使ってたものは、捨てれないけど、使えないから、箱にいれてベッドの下にしまいこんだのだ。
……だから、今、我が家にはマグカップと、小さな丼ひとつしかない。
どんな生活してんのって……笑われそうだな。
俺は、オレンジジュースを飲み干し、雨粒の音に顔をあげた。
久しぶりに雨が降りだしていた。