第5章 白虹
「そう?けど、俺は大野さんの欲しいものをあげたい。……予算は限られちゃうけど……」
「…………」
松本は、さながら、わふわふとすりよってくる大型犬を連想させるがごとく、お伺いをたててくる。
それが、なんだか可愛らしくて、俺は思わず笑ってしまった。
「ふふ……ありがと」
体もでかくて、落ち着いてて、男前で……。
さっきの映画館での、ちょっと強引な恋人繋ぎなんてキュンとさせられた。
だけど、ときどき、感じるこういう年下っぽい口調もたまらないのだ。
ああ……やはり、こいつが好きだな、と感じる。
すると、自然と欲しいものが口をついてでた。
「……じゃあ、おまえの時間をちょうだい」
「……え?」
「誕生日当日だよ。夜まで俺と一緒にいて」
「……それは、もとからそうするつもり……だったけど」
「泊まっていって。金曜日だから」
「……え?」
「誕生日がおわる瞬間まで。一緒にいて」
「……わ、かった」
松本は、ぎくしゃくと頷いた。
俺は、うつむいてアイスティーをごくごく飲んだ。
何も考えないでするすると言ってしまったものの。
俺……思いきったこと言った?もしかして……
なんだか、どえらいことをお願いした気がして、今さらながら恥ずかしくて顔をあげれなくなってしまった。