第5章 白虹
Satoshi
不意打ちだった。
松本の手のひらが俺のこぶしを、ふわりと包んだ瞬間、心臓がドキリと跳ねた。
「……!」
そのまますごい勢いで、加速度を増す心臓に息苦しさを感じつつ、暗闇のなか、思わず松本を見上げると、……やつは、まさかの知らんぷり。
なに……?
すると、しばらくして、松本の温かな大きなてのひらが、俺のこぶしを開き……やや強引に指を絡めてきた。
「……っ」
俺は、もう頭がパンク寸前だ。
愛のないビジネスの交わりや、むつみあいを強要させられ、それが常だった俺には、……こういう温かさに慣れない。
そうだよね……俺たち恋人同士だもんね……
いとおしささえ感じられる松本の手のひらの温もりに、応えるように。
俺はそっと自分の指を絡めた。
松本の握る手に少し力が加わった。
…………俺もほんの少し握り返した。
心がふうわりと温かくなる。
それから映画が終了するまで、ずっと手を繋いでいた。
もちろんだが、途中から映画の内容は頭からすっかりとんでしまっていた。