第5章 白虹
本編が始まる。
アクションシーン満載の作品だけあって、息がとまるくらいハラハラする場面が多い。
俺は、途中まで集中してみていたけれど、
……ふと、気づいてしまった。
大きな音がなった瞬間、隣で大野さんがぴくりと身じろいだ。
思わず、横を見下ろしたら、大野さんは真剣にスクリーンを凝視していた。
暗闇とはいえ、スクリーンからの光により、表情はなんとなくわかる。
大野さんは、口を少し開けて、まばたきもしないでスクリーンを見据えてて……
……やっばい。めちゃめちゃ可愛い!
その素の顔が、あまりにも無防備すぎて、俺は衝動的に、抱き締めたくなった。
でも、もちろん、今ここでそんなことしたら、大野さんにぶん殴られる。
まあまあいる、周りの他人の目もある。
でも。
…………いいかな……?
恋人だし……いいよね……?
俺は、そろそろと手を伸ばして、膝の上できゅっと握りこぶしをつくってる大野さんの手を、包んだ。
大野さんは、ハッとしたように、俺を見上げたけど、俺は知らんぷりでスクリーンを見つめ続ける。
そのまま手探りで拳をひらかせ、手のひら同士をあわせた。
大野さんは抵抗してこない。
汗ばんだ手のひら。
……温かいてのひら。
俺は、自分の指を、そっと大野さんの指に絡めた。
…………少しの間をあけて。
大野さんの細い指が俺の手を握り返してきた。