第5章 白虹
以前、一緒に来たことのあるシネコンに到着したのは、上映開始30分前。
間に合ったね、と安心する大野さんに、ちょっと待ってて、と言い残し、俺は、当たり前のようにポップコーンを買いにいった。
すると、戻ってきた俺に、大野さんはあきれたように笑った。
「……おまえまだ食うの?」
「え。食わないの?」
「クッキー……食ったじゃん」
「いや、まだ全然いけるっしょ」
「俺……いらないよ?」
「またまた。少しくらいならいけるって」
「……すげーな……」
信じられないという顔をする大野さんだけど、甘いものが大好きなの俺は知ってる。
案の定、席について、はい、と大きな容器を向けると、大野さんは、ありがと、と手を伸ばした。
「塩キャラメルだって」
「……ふーん……」
「うまいでしょ」
「うん……うまい」
もぐもぐする大野さんは、気がついてるのかいないのか、また手をのばした。
ここで、ほら!食えるじゃんって、からかったら、たちまちむくれちゃうのは、つきあいで分かるようになったから、俺はくすっと笑うにとどめ、一緒に塩キャラメル味を味わった。