第4章 夕虹
満員のバスに乗る。
この時間、七割がた乗客は、俺らの学校の生徒だ。
ぎゅうぎゅうの車内に体をおしこんで、なんとかスペースを確保して、つり革につかまったと同時に、バスは発車した。
ふう……、とため息をついて、窓の外を眺めた。
霧雨にけぶる街並みが、いつものように流れて行く。
ものの10分ほどでつくとはいえ、バスが嫌いな俺には苦行でしかない。
なんで、こんな交通の便が悪い高校を選んでしまったのか、といつも後悔する。
まあ……選べる状況になかったからなのだが。
密接した車内では、やれテスト範囲がどうだとか、昨日の歌番組がどうだとか、ボリュームおかしいんじゃないかと思う声で、学生たちが喋っていた。
…………うるせぇな
想いが顔に出そうになり、俺はうつむいた。
この女子たちの匂いはどうにかならないだろうか。
俺は、黙ってつり革につかまりながら、鼻で息をしないように、口を小さく開けた。
化粧なんかしなきゃいいのに。
10代の肌は、スッピンで十分なこと知らねぇの?
タバコの匂いも嫌いだが、香水や化粧品の匂いも頭が痛くなる。
雨の日は特にそれが顕著だ。
……気持ち悪……
そのうちに、さっき飲んだオレンジジュースが胃のなかでぐるぐるし始めた。