第5章 白虹
俺の個人的な見立てだが、大野さんは雅紀さんの前にいると、とても子供っぽくなる。
言ったら怒られそうだから言わないけど、なんとなく甘えてる感じがする。
それは肉親への甘えの種類のものだとわかってはいるが……時々寂しくなる。
何をどうしたって、俺は年下だ。
そして、恋愛経験も、それに付随するいろんな経験も、きっと大野さんの方が上だ。
故に、頼りないな、と思われてるんじゃないかなと思うと……悔しいというより焦りがある。
やっぱり大人の男がいいとか。
俺みたいなお子さまなんか相手にしない、などと、何かしらの理由をつけて離れていってしまうのでは、と
思うと気が気じゃない。
「……松本くん?」
どうしたの?と、雅紀さんが、なにかを感じたかのように、俺の目をみた。
優しい光をたたえた、その温かい目に、俺は、苦笑いする。
「……いえ、なにも」
「そう?智が悪いことしたら言ってよ?叱ってあげるから」
「そんなことしないし」
大野さんが口を挟む。
「そうだよね。智は松本くんが大好きだもんね」
…………!
「……そーゆーこといわないでっ」
からかう雅紀さんに、大野さんが真っ赤になって抗議した。
やっぱり大人だ。
雅紀さんは、俺らより一枚も二枚も上手だ。