第5章 白虹
責任を丸投げされたも同然の俺は、一瞬ぽかんとしてしまった。
雅紀さんが、しょうがないな、というように肩をすくめる。
「智の悪い癖だね。パーソナル情報ってのは、黙ってたら永遠に伝わらないよ」
「そぉだけど……」
「……特に。お互いを知りたい時期なら尚更だよ?」
「分かってるし」
「わかってないよ。これじゃ、松本くんが可哀想だよ」
「…………うん」
大野さんが、雅紀さんに窘められてむくれてる。
雅紀さんは、やれやれというように微笑んだ。
それは、駄々をこねる子供に対する、大人の顔。
「そういうわけで松本くん。智のお誕生日は君に託すから、盛大に祝ってやってね?」
「ま……雅紀さん!」
「はい!もちろんです」
慌てる大野さんを捩じ伏せるように、気を取り直した俺は、こくこくと笑顔で頷いた。
誕生日なんてビッグイベント、はずすわけないじゃん。
クリスマスと、同じくらい大事な日だぞ。
一方で照れ隠しのように、口を尖らせたまの大野さんは、黙ってクッキーの箱をあけてる。
俺は雅紀さんと視線をかわし、笑いあった。