第4章 夕虹
未成年であることを隠してる以上、KINGもなにもかも、全部辞めるのが一番いいのはわかってるが……俺は結局この仕事が好きなんだろうな、と思った。
一人でいるのももちろん大好きだが、どこかで社会と繋がっていたい思いがあるのだろう。
学校だけでは教わることのできない、人生のノウハウを、KINGで学べたら……なんて無意識で思ってるのかもしれない。
「大野さん」
柔らかなトーンの声が俺の名を呼ぶ。
俺は、閉じていた目をゆっくり開け、くるりとそちらを向いた。
視線の先には、リュックを背負い、足早にこちらに向かってくる……ついこの間恋人になった年下の男。
「ごめん、お待たせ」
「ううん」
委員会だといって、三年の俺より帰りが遅いっていうから、俺は中庭で、彼をのんびり待っていたところである。
「どうしたの」
「……空。見てた」
松本が、あいていた俺の隣のスペースに座る。
座ったとたんに、ふわりと香る彼の匂いに胸がとくん、と鳴った。
「……気持ちいいね」
松本が空を見上げ、にこりと微笑んだ。