第4章 夕虹
「…………」
大野さんは黙ってうつむいてる。
出すぎたこと言ったかな……って、少し心配になったころ、大野さんは、ぽつりと言った。
「……大野さん……?」
「俺……雅紀さんにとって邪魔じゃないかな……?」
ああ……そこもずっとひっかかってたんだね。
あんなに無償の愛をくれる人。肉親でもないのに……申し訳ないって、思ってしまうんだね。
違うよ。
出会って日が浅い俺でも違うと思うよ。
「……そんなこと。絶対にない」
「…………」
「ないよ。絶対」
「……ありがとう……松本」
大野さんは、俺にしがみついて、また少し泣いてるみたいだった。
俺は、落ち着くまでずっとずっと抱き締めていようと思った。
やがて、大野さんは、鼻をならして言った。
「……もう……裏バイトは……辞める」
「うん」
「………KINGは……もう少しやる」
「そう……」
「……お前を好きでいたい」
「……」
「……お願い……俺を嫌わないで……」
…………!
たまらなくなって、頼りない細い体を力いっぱい抱き締めた。