第4章 夕虹
大野さんの話を総合すると、つまりは、稼いだ金は全て雅紀さんにだしてもらった学費を返却するため、ということだったらしい。
「ほんの少しだけど父ちゃんの生命保険がおりるから、それで学校行くって断ったのに、父ちゃんの金はとっておけって」
「…………」
大半の金はみたこともない親戚という人に騙しとられたけれど、保険だけは、あとから判明したということもあって、わずかな手持ち金として大野さんの手元に残った。
だが、お父さんが亡くなった当時、中学生の大野さんに金の管理はできない。
幸か不幸か、身寄りの少なかった大野さんは、いろんな手順をふみ、最終、強い意思で名乗り出た保護者がわりになった雅紀さんに全てを預けていたということだ。
同時に恋人をなくした雅紀さんは、大野さんの成長を生きる糧にしたのだろう。
黙ってる俺に、大野さんがぽつんと呟く。
「でもさ……どんなに考えても雅紀さんが他人の俺に投資する義務はないでしょ……あの人も若いのに、俺に使ってる場合じゃない」
「…………」
「でもホールのバイトだけじゃ。とてもじゃないけど足りなくて。……だから、店長に紹介してもらって始めたんだ」
俺は、泣きたくなった。
理由があるだろうとは思ってたけど、あまりにも切ない理由すぎて。
雅紀さんは……絶対そんなこと望んでないのに。