第4章 夕虹
「あ、ごめん」
慌てて腕を緩めると、今度は大野さんがぎゅっとしがみついてきた。
その仕草がとてつもなく可愛くて、俺の頬は緩む。
その大野さんはうつむいたまま、
「でもさ……」
という。
「……ん?」
「…………ほんとにいいかな?」
「……いいかなって?」
この有頂天な気分にそぐわない質問。
意味がわかんないけど。
俺が怪訝な声で聞き返す。
すると、大野さんは小さく、
「オッサンと寝てたやつなんて……軽蔑するでしょ?」
不安げに言った。
俺は、そのとき、……そうか、と納得した。
ずっと泣いてるのも不安そうなのも……すべての根っこには、俺の反応の怖さがあるんだな、と、察する。
俺は、大野さんに伝わるようにゆっくりと言葉を選び、紡いだ。
心が伝わるように、優しく喋った。
「……軽蔑なんてしないよ」
「…………」
「それに、きっとそれをしなくちゃならなかった理由が……あるんでしょ?」
「…………」
「むしろ、知れるかもしれない機会ができてよかった、と、思う」
俺の言葉に、大野さんの薄い肩がピクリと動いた。