第4章 夕虹
……えっ
柔らかくて温かなそれがゆっくりと離れる。
俺がまじまじと、至近距離の大野さんを見つめると、大野さんは恥ずかしそうに微笑んだ。
「……こーゆーことでしょ。わかるよ」
「……う……うん」
キス……キスした。
大野さんの桜色の唇に目をうつす。
じわじわと現実味が増す。
大野さんと……キスした。
プスプスと脳みそが沸騰してゆく。
頭が爆発しそうだ。
「……そんな見ないでよ」
大野さんは、鼻をスンとすすり、またうつむいて俺の胸に頭を預けた。
俺は思わず力いっぱい大野さんを抱き締めた。
自分のこの内からあふれでるような想いをどう処理していいのか、わからない。
戸惑いと困惑と……嬉しさと、なんだかごちゃごちゃでよくわかんない。
キスしたってことは。
こーゆーことってことは……そーゆーこと。でしょ?
……泣いちゃいそうだ……俺
大野さんの髪の毛の香りを感じて、何度も頬擦りをして涙を誤魔化す。
大野さんはしばらくされるがままに、黙ってたけど、しだいに肩を震わせ、
「……苦しい」
と、くすくす笑った。