第4章 夕虹
俺がそういうと、大野さんは黙って、俺の胸に額をおしつけた。
「…………」
「…………」
それがあまりにも続くから、俺は、少なからず困惑してきていた。
……これはなんの罰ゲームだろ。
もう一回言わせて、だんまりって。
拒否する言葉を、考えてるのだろうか。
俺は、大野さんの汗ばんだ背中を擦り続けて、せめてこの大野さんの感触を忘れないようにしようと、ぼんやり思ってた。
触るなって言われたっておかしくないんだもん。
再び傷に塩を塗り込まれた気分だが、俺は大野さんを抱きしめる手を緩めなかった。
すると、しばらくして大野さんが、ぽつりと呟いた。
「……俺さ……おまえのせいで……もうバイトできないの」
「…………え?」
思わず聞き返してしまう。
俺は、大野さんの頭のてっぺんをまじまじと見つめた。
意味がわからなすぎる。
すると、大野さんが俺の服に顔をうずめたまま、怒ったようにもう一度言った。
「おまえのせいだから」
…………なに?
「え……どーゆー意味……」