第4章 夕虹
それから、家に帰る道中、大野さんは一言もしゃべらなかった。
同時に、俺がずっと隣を歩いていることについて咎めることもなく、まして、帰れ、ということも言わなかった。
俺は、はっきり拒否されなくてよかった……、と、安堵しながら、ついには大野さんのアパートにまでついてくることができた。
大野さんは、黙って鍵をまわし、部屋の扉を静かに開ける。
…………えっと……
俺は、恐る恐るたずねた。
この透明人間扱いっぷりは、どういう風にとればいいの。
「……入っても……いい?」
すると、うつむいてた大野さんがこくんと頷いた。
俺は、胸を撫で下ろし、お邪魔します、と大野さんに続いて部屋に入った。