第4章 夕虹
今まで見たことがないくらい、泣きじゃくってる大野さんは、しかしもう、それ以上俺から離れようとはしなかった。
逆に俺の背中をぎゅっとつかんで、しがみついてくる。
俺は、まわした手で、何度も小さな背中をさすり、大丈夫…と、囁き続ける。
しゃくりあげる大野さんは、幼児のよう。
なんだか、やたらと俺が悪いって口走ってる気がするけど、まぁいい。
……あとでゆっくり聞けばいい。
「う……ふぅ……」
「……大野さん……」
泣きすぎて、ぐちゃぐちゃな顔を見られないようにか、大野さんはうつむいて、何度も大きく呼吸をしてる。
さて……どうしよう。
大野さんは今夜はたぶんホテルでバイトのはずだったんだ。
なのに、なんらかの理由でできなくなった。
だから泣いてる。
ならば……
「……帰ろう?」
暗いとはいえ、男子高校生が二人道端で抱き合っていたら、悪目立ちする。
ナーバスになってる大野さんの気持ちを守るためにも、はやく静かな場所に移動したい。
俺が背中をそっとおすと、大野さんは、ゆっくり一歩踏み出した。
大野さんが何も言わないことをいいことに、俺は隣に並び、駅に向かった。