第4章 夕虹
部屋に入ったものの、大野さんは座ることもせず、黙りこくったまま、背中を向けて部屋の中央で佇んでる。
俺も入り口付近に立ち尽くしたまま。
大野さんが時々鼻をすする以外、何も音がしない。
蛍光灯の白い光だけが、煌々と俺たちを照らす。
耳の痛くなりそうなあまりの沈黙に耐えかねて、俺はそっと、
「ねぇ……何があったの?」
と、問いかけた。
聞きたいことはたくさんあった。
俺が悪いっていう理由もはっきりしない。
でも、何よりも、あれだけ大野さんが泣きじゃくった理由を知りたいと思った。
すると、大野さんは、ちょっと黙ってから、
「……おまえが悪い」
と、ぼそりといった。
…………???
まただ。
俺は目が点になる。
大野さんをここまで泣かせるほどひどいことをした覚えがない。
というか、泣かせないし。
……だけど気がつかないところで何かやらかしてたんだろうか。
俺は、不安に思いつつ、
「…ごめん…俺……何かした……?」
と、一歩近寄った。
大野さんは、うん……と、うなずいて細い肩を震わせた。
あ……また泣いてる
俺は、どうしたらいいのかわからなくて、そっと大野さんのそばにいった。