第4章 夕虹
コーヒーショップをでて、駅方面に向かおうと、ホテルを背にした。
心が重いと足も重くなるもんなんだな。
のろのろ歩き出したものの、なんとなく、もう一度後ろを振り返る。
未練がましいというか、あきらめが悪いというか。
拒否されたのに、それを受け入れられない自分にあきれてしまう。
そのときだった。
…………え
さっきエントランスに滑り込んでいったはずの大野さんが、再びでてきて、こちらに向かって駆けてくるのが見えて、俺は固まった。
……え?……は?
だが最初、俺をめがけてきてるのかと、そんな夢みたいなこと思ったけど、キャップをかぶったままのうつむき加減状態だから、違うみたいだ。
ほぼ全力疾走状態。
……見てて危ういんだけど!
そのまま俺の横をすり抜けて走っていこうとする腕を、咄嗟に掴まえた。
はっとした顔で俺をふりあおいだ大野さんの顔を見て、俺は息をのんだ。
「……まつ……もと」
「どうしたの……」
「ごめん……離して」
「それは無理」
「お願い……」
「……泣いてんじゃん」
俺は、大野さんの手を離すまいと、ぐっと手に力をこめた。