第4章 夕虹
KINGは、まだ開店したばかりのようだった。
ざっと見渡した感じ、まだ客はいない。
何度か見たことのあるホールスタッフに、お一人様ですか?と聞かれ、俺は、キョロキョロしながら、はい、と返事をした。
「お。松本くーん、早いじゃん、一番乗り」
カウンターに通された俺に、三宅さんがグラスを磨く手を止めて笑いかけてくれた。
俺は、ぺこりと礼をする。
「こんばんは。あの……今日は大野さんは……?」
「大野?……今日はどうだっけ」
三宅さんが傍らの長野さんに話をふると、長野さんは、うーん……?といいながら思案顔になった。
「今日は……出勤じゃなかったと思うんだけどなぁ」
……え……
「そ……うですか」
俺があまりにがっかりした顔になったから、長野さんが苦笑する。
「……大野に会いにきたの?」
「はい。今日はKINGって言ってたから、てっきり」
「あ、そっか。あいつ、今日あっちだ」
「健!!」
思い出したように呟いた三宅さんに、長野さんが鋭く叱責した。
…………え?
三宅さんは、やべ、というように口を引き結ぶ。
長野さんが今までみたことない真剣な顔になってる。
…………
俺は、二人の顔を代わる代わる見つめた。