第4章 夕虹
「あ……えと」
困った。
大野さんは絶対そこにいると思ったから、咄嗟になんていったらよいのか。
大野さんが、学校を欠席したことすら、雅紀さんに言ってセーフなのかわからない。
すると、言い淀んでいる俺を助けるように、雅紀さんが、
「智かい?」
と、聞いてくれた。
「あ……はい」
「うちには来てないよ。……確か、今日はアルバイトだってこの間言っていたけど」
……KINGか。
「そ……ですか」
「……智と連絡とれないのかい?」
雅紀さんの心配そうな声音に、俺は、慌てて言い訳をした。
「えっ……と、はい。でも、たいした用事じゃなくって。こないだ図書館で大野さんが借りてた本の名前を知りたくて」
「ふふ……あいつ本なんて読むんだ」
雅紀さんが、意外だ、と、笑った。
……我ながら、すらすらでてきた嘘にビビる。
「……また遊びにおいで」
「はい、あ……ありがとうございました。大野さんからのメッセージの返事待ちます」
「うん。そうして。じゃあね」
「はい。失礼します」
うまく切り抜けた俺は、雅紀さんにお礼を言って通話を切った。
……KING。
アルバイトにでてるなら、大丈夫な気もするけど。
……なんだか、胸騒ぎがする。
俺は、アパートの敷地から出た。