第4章 夕虹
夕暮れの空にトンボがすぃーっと飛んで行くのを、ぼんやりみつめる。
だんだん気温が下がってきて、からだが冷えてきた。
ドアの前に座り込んで、はや一時間が経過しようとしている。
こんなことをしていると、もはやストーカーだ、と思いつつ、一度嫌な予感を感じてしまうと、何かせずにはいられなかった。
もしも大野さんが出かけているなら、帰ってきたところをつかまえようとここにいるのだが、それだけでなく、メッセージをいれたり電話をならしたり、と、俺はあらゆることを試した。
その、どれもが空振りで。
「……あ」
……ふと、気づいた。
「……雅紀さんのところにいるのかな……?」
大野さんの優しい保護者の顔を思い出す。
俺は、急いでついこないだ連絡先を交換したばかりの雅紀さんの名前を電話帳から探しだし、タップする。
『……もしもし』
二度ほどのコール音のあと、穏やかな応答があった。
「あ、雅紀さんこんにちは。あの……松本です」
『こんにちは。珍しいね。どうしたんだい?』
…………その受け答えで、大野さんはそこにいないことを察した。