第4章 夕虹
そもそも最初に怒ってたのは俺だ。
大野さんの言ってることが納得できなくて、先に我慢できなくてその場を離れたのは俺だ。
……なのに、どうしてこっちからまた歩み寄ろうとしてるのか。
「……これが、惚れた弱みなんだろうなぁ」
俺は、大野さんのアパート前でため息をついた。
今日一日学校にいる間、何度かメッセージを送ったが、既読すらつかない。
二宮の話どおりだと、大野さんの体はあまりよい状態ではないよね。
さらに、仮にそれが本当で、今の状況がそうであるならば、俺のせいでもあるじゃんか。
やめてくれよ……一人で倒れてるとか洒落にならない。
俺は、古びたドアの前にたち、インターホンをならした。
古いながらも、一応、中と会話ができるスピーカーがついてる。
俺はそれに耳をすまし、大野さんの反応を待った。
ところが、しんとした部屋からは物音も聞こえない。
もちろん応答もない。
……寝てんのかな
俺は、今度は電話を鳴らしてみた。
鳴らしながら、ドアに耳をくっつけて、気配を探ったが、相変わらずドアの向こうは静まり返ってる。
電話が鳴ってる感じもない。
…………
俺はドアの前に座り込んだ。
長期戦だ。