第4章 夕虹
どうして大野さんがそんなことを言い出したのか、意味がわからなかった。
心当たりが唯一あるとすれば、あいつに犯されて動けなくなった大野さんの現場に俺がいたこと。
あの日に、ウリのアルバイトの話を聞いて、少なからず衝撃をうけたのだが、思えばあの日あたりから、大野さんは、よそよそしくなってしまったような気もする。
好きになってもらう資格だとか、なんだとか言ってたけど…………仮に兄貴の推理が正しければ、それらはすべて雅紀さんへ金を渡すためだろう?
そりゃぁ、ビックリもしたけど……それが俺の想いを受け入れない理由になるのかね?
釈然としない思いで、満員のバスの集団を見渡した。
今日は大野さんの姿はない。
休みかな……
一昨日の夜からメッセージのやりとりは途絶えたままだ。
嫌われたかな……
泣きたい思いで、バスを降りた。