第4章 夕虹
「松本……」
大野さんが困ったように、俺を見る。
その表情は、悲しみと戸惑いに染まってて、嬉しさの欠片も見当たらない。
俺は絶望的な気分になった。
……こんなはずじゃなかったのに。
そんな風に思われるなんて、心外だよ。
なんでだよ。
俺はバイトであんたのこと判断なんかしないよ。
俺は、髪をかきあげ、息を吐いた。
俺だって……怒るよ?
「……大野さん。俺をみくびらないで」
「…………」
「俺は、あなたの内面を好きになったんだよ」
「…………」
「好きになってもらう資格なんて……勝手に自分でつくんなよ」
大野さんが、まるで泣くのを我慢するかのように口を引き結んだ。
黙ったまま何も言おうとしない。
しばらく二人でだんまりを決め込んでいたけれど、俺は、今日は、もう無理だ、とノートを閉じた。
「教えてくれてありがとう……帰るわ」
「…………」
俺が席をたっても、大野さんは動かなかった。
俺は、出会って初めて大野さんから離れたいと思って……その場を去った。