第4章 夕虹
松本みたいな健全な男に、俺が想いを寄せるなんておこがましい。
そんな気持ちから、一線引くように頑張ってるのに。
そんな俺の想いを見透かすように、松本はいつもとかわらず懐いてくる。
壁をつくってもつくっても、うまくそれをすりぬけてくる。
困るよ……
あきらめたいのに。
好きという想い、封印したいのに。
それでも、そんなことを思いながらも、松本を拒否でききれない俺は、やっぱり一粒の未練にしがみついてしまってるのだろうな。
ふう……と、息を吐いて、図書室に足を踏み入れる。
見渡すと、一番奥のテーブルで難しい顔をして何やら読んでいる松本を見つけた。
そっと近づくと、彼が見てる本は……
「…………それ、古文に関係ある?」
笑いをこらえながら、話しかけると、松本は驚いたように顔をあげた。
「は……早くない?」
「なんで。きょうは六時間だもん」
「あ……三年生は、七時間だと思ってた」
へへ、と頭をかいて松本は読んでた本を閉じた。
「……バーテンダーになりたいの?」
「……そーゆーわけじゃないんだけど」
……カクテル図鑑なんて。
高校の図書室にある???
俺は心で突っ込んだ。