第4章 夕虹
ところが、嫌なことや都合の悪いことというのは、狙いうちするようにやってくるもの。
それは、前方から歩いてくる、帽子をかぶった男。
……何気なく目が合う。
…………!
……瞬間、俺は凍りついた。
そいつは、俺に気がつくと、にたと笑ったように見えた。
「今日はそいつが相手か?」
そういってすれ違ってゆく。
俺は聞こえないふりの完全無視で、ひたすら前を向いて歩いた。
俺と大野さんを犯したやつ。
通報されないことをいいことに、まるで警戒心なくこのあたりをうろうろしてるようだった。
「なんだー?知り合いか?」
兄貴が怪訝な顔で後ろを振り返ったけれど、俺は、さあ……と、いって、口を引き結んだ。
「人違いじゃない」
「……人相の悪ぃやつだったな」
「ほんと?みてもないや」
俺の態度に、兄貴はあっさりと前を向いて、再び微かな千鳥足で歩き出した。
「……大丈夫?」
「大丈ーぉー夫。そうだ、ラーメン食って帰るか」
「だめだよ。電車なくなっちゃう」
「いいじゃん」
「……無理。腹一杯だよ、俺」
「えー……だらしねーなー」
「はいはい。今度ね。帰ろ帰ろ」
一刻も早く、ここから離れたかった。