第4章 夕虹
重厚な扉をゆっくりと開くと、中から聞き覚えのあるBGMが流れてきた。
薄暗い店内から、一人の青年が近づいてくる。
「いらっしゃいませ……お二人様ですか?」
「はい」
兄貴が頷いたのを確認して、その青年はちらりと俺に視線をよこし、あれ?というような顔になった。
「……松本くん?」
やば……リョウスケさんだ
俺はペコリと礼をした。
俺が襲われたこと……リョウスケさん口に出さなきゃいいけど。
そんなこと兄貴が知ったら、暴れそうだもん……
そんな思いが顔に出ていたのかわからないけど。
リョウスケさんは、微かに頷いて
「久しぶりですね」
と、さわやかに微笑んだ。
「はい……あの、兄です」
慌てて、紹介する。
兄貴が、軽く会釈すると、リョウスケさんも、兄貴に向かって丁寧にお辞儀をした。
「ヤマダです。ご来店ありがとうございます」
花開くように微笑むリョウスケさんは、息をのむほど綺麗だった。
あの事件以来、会うのは初めてだったけど、こんな感じの人だったかな、と、驚く。
こちらにどうぞ、とテーブルに通してくれるリョウスケさんの身のこなしは、ホテルマンのように優雅だ。
兄貴も満更じゃないみたいで、
「……丁寧な店だな」
と、呟いて、おしぼりで手をふいていた。
「……顔、拭かないでね」
俺は、小声で釘をさした。