第4章 夕虹
次の日の朝、いつものバスに大野さんは乗ってきた。
後ろ頭にちょっぴり寝癖がついてるのが、しっぽみたいで可愛い。
おとなしくずっと寝ていたのだろう。
俺は席を譲りながら、
「もう大丈夫?」
と、小さく声をかけた。
大野さんは立ってるから、と、意思表示をしたけれど、俺が怖い顔をしたら、仕方なく座り、俺を見上げる。
「うん。ありがと。もう平気」
黒ぶちメガネの奥の目を細めて笑う。
どうしても口元の傷に目が行き、俺はズキズキする胸をおさえた。
金を得るために.……体を売る。
おそらく。
推測でしかないけど、おそらく大野さんは間違ってる。
でも、それらをどうやって証明するのか。
証明できたとして、どうやって伝えるのか。
……対応策がまったく見えなかった。
そんななか、俺はフラットな態度を心がけた。
大野さんが、俺の反応をすごく気にしてる気がして、いつも通りに振る舞った。