第4章 夕虹
「……今まで隠しとおしてきた事が、今日明日にいきなりばれるわけでもないだろう」
「そ……そっか……」
俺は、兄貴の言葉に、ぎくしゃくと頷く。
「ただ……あまりにリスクが高いし……昨日もあれだけ具合が悪くなるほど酔っていたということは、大野にとってもいいことじゃない、と俺は、思う」
「……うん」
昨日の大野さんの様子は、悪酔いしたということにしてある。
まさか、抱き潰されたなんて、兄貴に言えるわけない。
俺は、体が心配だと言ったときの、大野さんの揺れる瞳を思い出していた。
あれは、俺の言葉で、自分のしていることに迷いが生じているととってもいいのじゃないか、と考えていた。
「……大野は、今日は大丈夫なのか」
「うん……食欲はなさそうだったけど。普通に話ができるくらいには」
「……そうか。雅紀に連絡しとくか?」
「あ…それは、いいって」
「…………なぜ」
「雅紀さんには……知られたくないって」
すると、兄貴は、ほらな、と言って眉をひそめた。
「俺の推測は、あながち間違っちゃいないと思うぞ」
「うん……俺もそんな気がしてきた」
俺は、やるせなくなってうつむいた。
もし、それが本当なら、どうしても彼に伝えたいことがある。
きっと本人はわかってないから。
大野さん……違うよ。
ひとつ間違えちゃダメなのは、雅紀さんはそんなお金……望んでない。絶対。