第4章 夕虹
俺は、智をぐっと抱き寄せた。
智はいっそう体を丸め、ダンゴムシのようにもぞもぞ動いていたかと思うと、落ち着き場所を見つけたように、俺の胸元に顔を寄せ、深い吐息をついた。
俺は智のぬくもりを感じながら、その華奢な背中をゆっくりと擦ってやる。
まるで、母親が子供にするように。
風呂上がりだからか、体はホカホカしてる。
手足も暖かいから、直に寝てしまうだろう。
俺の体に足を巻き付けてきて、逃がすまいとする仕草に笑ってしまう。
いつものことだけど、必要とされてるみたいで、なんか嬉しい気持ちになる。
……あ、そういえば、この人。
「ねぇ……今朝、バスで具合悪くなったの?」
「…………ん?……ああ……うん」
「無理しないで、学校休めばって言ったのに……」
前日、急な指名が入ったから、バイトの後に裏バイトにも行くって言ってたから心配してたんだ。
基本、裏は深夜遅くになることが多いから、一応金曜土曜限定だって言ってたし……。
「なんで知ってん……の」
胸元から、微睡んだ声がする。
俺は背中をゆっくりと擦りながら、言った。
「うちのクラスのやつが、智のこと聞いてきたから」
「……ああ……なんかあの子同じクラスって……言ってたなぁ」
「あんまり……他人に隙をみせちゃ駄目だよ」
「みせて……な……い」
…………沈黙。
寝たな。
俺は、すうすうと寝息をたてる智の髪の毛に、キスをした。