第4章 夕虹
すぐに智の甘い香りが、ふわりと鼻孔をくすぐる。
それは、ボディーソープでもなく、シャンプーでもなく。
ボディーミルクでも、つけてんのか?と思うほど。
ひんやりした柔らかな唇を、何度か食んで楽しんでいたら、
「…………ん」
唇を少し開け、智が誘うような素振りをしたから、俺も、顔を傾け、遠慮なく舌を差し込んだ。
この人は不思議で、雰囲気も匂いも甘いが、唾液も甘く感じる。
………幼馴染み相手に、こんなことしてる俺がおかしくなってるのだろうか。
俺が彼の舌ごと、キュッと吸うと、智は、重なった唇の端から、
「……ぁ……」
と、なんとも色っぽい声をだした。
俺は、ドキリとして思わず唇を離した。
濡れて赤くなった唇を半分開けた智が、うっとりと俺を見上げる。
「……うまくなったね……ニノ」
「……褒められたと思っていいの?」
「うん……おまえ相手にシたくなっちゃうくらい」
「……冗談」
「ふふ……嘘だよ」
言って、智は猫のように体を丸めて俺にすり寄ってきた。