第4章 夕虹
「……俺なんかが、口出しするようなことじゃない……けど」
着替えた俺に、横になるように促しながら、松本は言った。
「大野さんには……自分を大事にしてほしいよ」
「…………」
「体を……痛めたら、俺は心配だよ」
仕事を否定をしないかわりに、松本は俺のことが心配だと、そう言った。
タオルケットをかけてくれた松本は、まるで小さい子にするように、俺の頭をポンポンと
撫でた。
「……倒れてるの見て、心臓とまったもん」
「……大袈裟だよ」
「ほんとだよ。……無理しないでほしいな」
松本はベッドに頬杖をついて、俺を見つめ、少し微笑んだ。
その、笑顔には無理してるようなところはなくて……いたたまれなくなり、俺は、目をそらした。
「俺もお風呂借りてもいい?」
松本は、つとめて普通にしてるのか、明るく言って立ち上がった。
「……うん」
「しんどいだろうから先に寝ててね」
「……うん」
落ち込もうと思えばどこまでも落ち込むことはできる。
だけど、普通にしようとしてる松本を前に、俺も普通に振る舞うことに徹した。
悲劇のヒロインなんかになる気はない。
自分で選んだ仕事だ。
とにかく、腹のなかでどう思ってるのかはわからないが、蔑んだ態度をとられないことに、俺は安堵していた。