第4章 夕虹
…………
ヒヤリとした感触に、我に返った。
「大野さん……よかった」
泣きそうな顔の松本のどアップに、一瞬戸惑う。
「大丈夫?どこも痛くない?」
「……俺……」
「すごい音がしたから、見に行ったら倒れててびっくりしたよ……。どうしたの?のぼせたの?」
「……うん」
立ちくらみをおこしたところまでは覚えてる。
なんとなく足とか腕がずきずきするのは、打ち身のせいか。
「……ごめん」
起き上がろうとして、松本に制止された。
「……無理しないで」
「…………」
松本が運んでくれたのだろう。
タオルケットはかけてくれてるけど、裸だから、情事の痕跡は見られてしまったに違いなかった。
見えないところのキスマークなら、ばれないと思っていた自分がめでたいな、と、思う。
松本の顔がみれなくて、俺は、目を閉じる。
「大野さん……あのさ」
「…………」
遠慮がちに声をかけられ、心臓が早鐘をうつ。
何を言おうとしてる?
おまえは何を見た?
いろんなパターンの答えを用意しなきゃと、思うのに、どの答えも不本意で苦しい。
こんなバイト……おまえには、できれば隠し通したかったよ。
判決を待つ被告のように、だまっていると、
「……あいつにやられたの?」
まるで、予想もしなかった問いが投げられた。