第4章 夕虹
Satoshi
……終わった、と、思った。
松本の顔に、驚きと戸惑いの色が浮かんだのをみた。
彼の視線が、俺の口元に注がれてるのに気づいて、俺は、またゆっくりうつむく。
なんかひきつれたような痛みがあるけど、もしかしたら傷にでもなってたのかもしれない。
……あいつ容赦なく突っ込みやがったから、顎が外れなかっただけマシだと思ってた。
俺と同じことを、松本もあいつにされた。
ならば、同じような傷の意味は、察してしまうにちがいない。
実際、彼の戸惑いかたは、それを物語ってる。
「おおのさん……それ……」
「ごめん……風呂入ってきていい?」
たまらず遮って、玄関近くにある浴室の扉に手をかけた。
体が気持ち悪くて限界だった。
情事の痕跡は流してきてない。
一刻も早くあの部屋をでたかったから、転がるように外に出たからだ。
なんなら、俺の腹の中にはあいつの残滓が残ってるかもしれない。
「……あ、うん」
松本が体を避けてくれた。
泣きたい気持ちを通り越して、あきらめの境地にいた俺は、黙って、浴室に入った。