第4章 夕虹
大野さんのアパート前についた。
「……ありがとうございました」
そう言って、降りようとする大野さんに、兄貴は振り返って、俺も車外に押し出そうとした。
「……え?」
「お前、母さんには泊まりだって言ってあるから、大野に泊まらせてもらえ」
「いや、あの……」
大野さん、しんどそうで、俺どころじゃなさそうなんだけど……
俺が戸惑ってると、先に降りた大野さんは、俺らの会話が聞こえてたのか、ちょっとためらってから、
「……いいよ。松本……。なにもないけど良かったら」
あまりよさそうな声の雰囲気ではないんだけど……と俺は、思ったが、せっかく、昼間楽しかったのに、こんな一日の終わりは嫌だと思い、
「うん……じゃあ」
と、大野さんに続いて車を降りた。
兄貴がうなずいたのを確認してドアを閉めると、車は静かに発進した。
「……ありがとう、松本」
部屋に入り、大野さんは俺に頭を下げた。
その肩が小さく震えてて、俺は、最初泣いてるのかとおもって、あわてて大野さんを上向かす。
…………?!
ドキッと心臓がなった。
大野さんは泣いてなかった。
だが、その引き結んだ口元に切れたような跡があった。
薄暗いホテルの前や車の中では分からなかったが……
鬱血したようなアザもある。
まるでなにかを無理やり突っ込まれたようなその傷に、俺は、嫌というほど心当たりがあった。