第4章 夕虹
10持30分を過ぎた。
ホテルの前を行き来する人も少なくなってきた。
暗い気持ちで、唇をかむ。
残念ながら一番傷の深いパターンかもしれない。
お茶一杯で喫茶店でこんなに粘れるわけはない。
……何してんだろうなぁ……
ふと、大野さんの背中いっぱいに散らばっていたキスマークが甦り、その相手と会ってるんじゃないかと、思い至る。
ということは……やっぱり。
そのさきを考えたくなくて、俺は、あと残りわずかとなったラテを、飲み込んだ。
ぬるいを通り越して、冷たくなったそれは、まずいことこのうえなかった。
これ以上ここにいても、惨めになるだけだ、と、ラテにも言われてるようだ。
俺は、苦しい気持ちで、もう帰ろう、と、立ち上がりかけた。
え…………
その時、ホテルの自動扉があき、一人の男がでてきたのに気づく。
そいつの顔をみて、背中がぞくりとした。
なんで、あいつが……
おもむろにポケットから煙草の箱を取り出し、火をつけたかと思うと、そのまま駅方面に歩いて行くその男の顔に、嫌というほど覚えがあった。
俺を暗がりに引きずり込み……信じられない淫行を強いた男。
「……っ……」
呼吸が早くなる。
吐き気がする。
なんで、こんなところであいつと会うんだ……!