第4章 夕虹
吸汗速乾性の松本のTシャツはすぐに乾いたけど、俺たちは、そのままいつまでも海を眺めていた。
時々ポツポツと話をして、また二人で波の音をきく。
そんな静かな過ごし方を好む俺に、松本は飽きることもなくそばにいてくれた。
「大丈夫?……退屈じゃない?」
と、心配になって聞いてみたけど、
「ん?ぜーんぜん」
松本は屈託なく笑い、
「大野さんといるだけで、俺は楽しい」
……などと、殺し文句をたれた。
なんだか、ほんとに期待してしまう言動に、ドキリとする胸をおさえる。
夕方まで海にいて、少し早い夕飯を、松本がアルバイトしていたファミレスで食べた。
「いい色に焼けたなぁ」
見事に真っ赤に日焼けした俺たちは、店長に笑われ、クールダウンに、と、クリームソーダをご馳走になった。
そんなひとつひとつの普通のことが、とても嬉しくて、楽しくて。
…………やだな
今から飛び込まざるをえない非日常な空間が、苦痛で仕方なかった。
……嫌だ、という感情が芽生えた時点で、この仕事はもうできない、と、改めて思った。