第4章 夕虹
月曜日の朝。
いつものバスのいつもの座席で、大野さんを待つ。
途中のバス停から、どやどやと乗り込んできた学生のなかに、黒ぶちメガネをかけた大野さんをみつけ、ホッとした。
大野さんは俺に気がついて、ニコッと笑ってくれる。
俺も片手をあげた。
「おはよう」
微笑みながら俺のそばに立つ大野さんに、俺はすかさず立ち上がり、席に座るように促した。
「え……いいよ」
「だめだよ。病み上がりのくせに」
「もう治ったって」
「いいから」
俺は強引に大野さんを座らせ、つり革につかまった。
ほどなくして、バスが発車する。
「熱は?」
「もう大丈夫。いろいろありがとう」
「……よかった」
顔色もよく、笑顔に無理もない。
ほんとに調子がもどったんだな、と嬉しく思っていた。
ところが、ふと窓の外に目をやった大野さんの左の首筋に、紅いアザをみつけ、
………………。
俺は一気に暗い気持ちになった。
いつもなら、俺も多分気がついてない。
例え、目にはいったとしても、虫刺され程度にしか認識しないと思う。
だが、あれだけ背中に散らばったキスマークをみたあとだと、このアザも卑猥な想像にしかならなくて。