第4章 夕虹
「でも、あいつ……恋人いないはずなんだけどなぁ」
たどりついたコインパーキングで、雅紀さんは駐車料金を投下しながら、ぼやいた。
うるさいセミの声にかき消されそうな、その小さなつぶやきは、俺の記憶の中の大野さんを思い起こさせる。
俺に向かって微笑む大野さん。
俺を守るように抱き締めてくれた大野さん。
可愛くはにかむ大野さん。
どの顔も、扇情的な情事の名残をもつにはあまりにアンバランスで。
……俺は、とても混乱していた。
どういうことなんだろう……。
「うわ……暑いな……」
乗り込んだ車のなかは、夏の太陽のせいで既に殺人的な暑さ。
雅紀さんは、エンジンをかけ、エアコンをフルにあわせてくれた。
「ごめんね……すぐ冷えるから」
「あ……全然大丈夫です」
俺はシートベルトをしめながら、首を振る。
住所を告げ、雅紀さんが、それをナビゲーションにセットし、車は静かに広い道路に出た。