第4章 夕虹
「それだけぶつぶつ文句言えるなら大丈夫だね。ほら……」
雅紀さんは大野さんの肩口に腕をさしこみ、そっと体を起こした。
「………松本くん、ちょっとだけ、智、支えてて?」
「……あ、はい」
ゆらゆらしてる大野さんを受け止めてると、雅紀さんは手近にあるプラスチックのボックスから、タオルと新しいTシャツを引っ張りだした。
「はい万歳」
そして、大野さんのTシャツをそっと脱がした雅紀さん。
目の前に真っ白な肌が表れて、俺は一瞬ドキリとする。
ところが、すぐに手のとまった雅紀さんに気づく。
「……どうしたんですか?」
「いや、なんでも……」
強ばった彼の視線をおい、
「…………」
え……?
俺も、固まってしまった。
ぼんやりとうつむいてゆらゆらしてる大野さんの背中には、無数の紅いアザがある。
真っ白な肩甲骨に沿うように。
背中の中心。
脇腹から背中に、そしてもっと下へ。
紅いうっ血したようなアザ。
虫刺されのわけはない。
何をしたら、皮膚がこうなるのか。
……オレだって、これくらいの知識はある。
キスマーク
誰に?
いや……誰と?
…………大野さん……?
驚きで息がとまってる俺に、そのまま黙ってろ、と視線で制した雅紀さんは、大野さんの体を手早くふいて、乾いたTシャツを着せた。