第4章 夕虹
一時間後。
遠慮がちに聞こえたノックに、扉をあけると、心配そうな顔の雅紀さんが立っていた。
「ごめんね……ありがとう。松本くん」
「いえ……」
ひそひそと言葉を交わしながら、雅紀さんは小さな三和土にサンダルを揃えた。
俺がとった判断は、雅紀さんに来てもらうことだった。
もちろん俺が看病できるならば、それが一番いいんだけど。
こんな、物の少ない家で、きちんとお世話ができる自信が、俺にはなかった。
好きだ、という気持ちで寄り添うだけでは、大野さんの役には立てないことくらいわかってる。
「翔ちゃんから電話なんて……びっくりしちゃったよ」
「すみません。大野さんの携帯勝手にさわるのもなぁ……と思って」
「ううん。番号かえてなくて良かった」
雅紀さんは、大野さんの額に手をあててから、持ってきた冷却シートを手早くはり、体温計を脇にそっと突っ込んだ。
「はい。兄貴と雅紀さんが知り合いだって……知ってて良かったです」
俺は、雅紀さんと連絡をとるために、兄貴に頼った。