• テキストサイズ

Attack 《気象系BL》

第4章 夕虹



Nino



もうすぐ日付がかわりそうだという、夜も深い時間。
カチャ……と、玄関のドアが静かに開いた。

やっているゲームから目を離さないまま、全神経を右の扉に集中する。
やがて、申し訳程度の短い廊下を、ペタペタと歩く音がして。


「…ただいま」


この静かな空間を壊さないような、ひそやかな声がした。


「来てたんだ……ニノ」


俺は、顔をそちらに向けないまま、


「……お邪魔してます」

といった。


この家のものではない香りを纏っている智に、俺は微かに眉をひそめる。

赤ちゃんのような、甘やかな匂いをしてるはずの彼は、いまは人工的な香水の香りとタバコの匂いを僅かに漂わせてて。

1Kのこの部屋は狭いから、外から持ち込まれたその匂いに、またたくまに染まってゆく。

智の家なんだから、転がり込んでる俺がどうこういえた立場じゃないが、知らず息を吸うのをためらってる自分がいて……そんな自分が嫌になる。


「シャワー浴びてくるわ……」


智は、ポケットから財布やスマホを出してテーブルに投げながら、気だるく呟いた。
そして、着てるシャツのボタンを弾きながら、浴室に向かった。

その後ろ姿を、こっそりと目でおうと、首筋に赤い跡がついてるのに気づく。

体育の時間どうすんだよ……、と俺の方が気を揉んでしまうんだ。
/ 725ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp