第4章 夕虹
「…………」
「…………」
しばらく沈黙がおりた。
パーテーションで区切った向こうから、他の客の楽しげな笑い声が聞こえてくるのが、嫌に耳についた。
俺はそれ以上何て言っていいのかわからなくて、じっと皿の上に残った油を見つめて微動だにしなかった。
兄貴は黙ったまま、焼けた肉を、俺の皿にのせ、静かにトングを置いた。
「……潤」
ぴく、と体が揺れる。
兄貴の声は、とても柔らかくて好きだけど。
真剣な時と、怒ってる時は、とてつもなく冷たい。
怖い。
「潤」
でも、もう一度名を呼ばれて。
こっちを向けと言う意味なのだろう。
俺は、観念してそろそろと顔をあげた。
すると、兄貴は予想に反し、穏やかな表情で組んだ指に顎をのせ、こちらを見つめていた。
「……なに」
「……勘違いしないでほしいが。俺はお前の想いを潰すつもりはない」
「…………」
「お前が大野に想いを寄せていたのは、わかってた」
「……え……」
「何年、お前の兄貴をやってると思うんだ」
兄貴は、ふふと笑んだ。