第4章 夕虹
「……久しぶりだな」
「焼き肉が?」
運ばれてきた白飯を頬張りながら顔をあげると、兄貴は苦笑いして、ちげーよ。と、首を振った。
「……お前の笑った顔だよ」
思わず、咀嚼していた口が止まる。
兄貴は、ちょっと笑って、トングを手に取り肉をひっくり返した。
じゅわっとタレが弾け、香ばしい匂いが広がる。
俺は、肉を見つめながら、ごくんと口の中身を嚥下した。
「…………そうかな」
ぽつりと返したら、兄貴は肩をすくめる。
「俺の記憶違いじゃなけりゃな」
兄貴は、そういって、焼けたアツアツのカルビを俺の皿に乗せた。
俺は黙ってその肉を、ぽいと口に入れる。
「あふっ……」
反射的に出しそうになり、あわてて耐えた。
「ははっ……慌てなくても肉は逃げねぇよ」
ドングリのような大きな瞳が細められた。
そんな穏やかな笑顔……
「……そっちこそ」
呟いたら、兄貴は、ビールをごくんと飲み干し、
「そうかもな」
と、笑んだ。