第4章 夕虹
一回家に帰って、着替えてから外出する。
俺は、電車を乗り継いで、ちょっとしたビジネス街へ向かった。
待ち合わせ場所に兄貴が指定してきたのは、兄貴の働く会社の最寄り駅。
駅の近くに、美味しい店があるから、とのことだ。
いつも使うごちゃごちゃした繁華街近くの駅とは、雰囲気も、乗降客の種類もなんとなく違って、ちょっと居心地が悪い。
ジーンズにTシャツという姿が浮いてる気がしてしょうがない。
「すまん。待ったか」
だから、俺が待つ場所に、カッターシャツ姿の兄貴が現れたのをみたときは、ホッとしてしまった。
兄貴を頼りに思ったのは…久しぶりのことだ。
「……高くないの。こんなとこ」
連れてこられた店に、俺は、若干引きながら、店内を見渡した。
てっきりチェーン店の食べ放題だと思ってた。
お洒落な内装は、焼き肉屋と呼ぶには、疑わしいほどで、肉の値段を確認するのが怖いほどだ。
「……おまえの誕生日、きちんと祝えてなかったからな」
兄貴はおしぼりで手を拭きながら、微笑む。
俺は、うん……とうつむいた。
あの日はいろいろとありすぎて。
思い出すことが辛いことと、幸せに思えたことが同時に存在する、特別な日になった。
余談だが、俺は再び無断外泊をしてしまってて、帰ってきて親に大目玉をくらうおまけまでついた。